EUのTDM例外(DSM著作権指令 第3条・第4条)
EUの著作権ルールで、文章や画像などを機械で分析する「テキスト・データマイニング(TDM)」のために、許諾なく著作物を複製できる場合を定めた例外です。AIの学習との関係で注目されています。
くわしく
EUの「デジタル単一市場における著作権指令(DSM著作権指令、指令2019/790)」は、TDMを「パターン、傾向、相関関係などの情報を得るために、デジタル形式のテキストやデータを分析する自動分析技術」と定義し、2つの例外を設けています。
- **第3条**:研究機関や文化遺産機関が、学術研究の目的で行うTDM。権利者が拒否(オプトアウト)する仕組みはありません。
- **第4条**:主体・目的を限らない一般的なTDM。ただし権利者は利用を「明示的に留保」でき、ネットで公開しているコンテンツでは「機械可読な手段など適切な方法」で行うとされています。
指令は加盟国の国内法を通じて適用されます。EU AI法53条は、汎用AIモデルの提供者に、この第4条の留保を見つけて守る方針を整えるよう求めています。欧州委員会は2026年7月、オプトアウトをEU単位で登録する仕組みの実現可能性調査を公表しました。
クリエイターにとってのポイント
- 自分の作品をEUでのAI学習に使われたくない場合、第4条の「留保」をどう表示するか(robots.txtなどの機械可読な方法か、利用規約の文章か)が議論になっています。
- ドイツでは、利用規約に自然な文章で書いた留保も機械可読な留保に当たりうるとした裁判例があると、欧州議会調査局の資料は紹介しています。
- 生成AIの学習がTDM例外の範囲に含まれるかどうか自体にも、法的な不確実性があると同資料は指摘しています。
- 日本の著作権法30条の4とは、対象・条件の仕組みが異なります。
具体的な場面の例
- 自分のポートフォリオサイトを持つイラストレーターが、AI学習のクローラーを拒否する設定(robots.txt)と、利用規約での「AI学習への利用を留保する」旨の記載を、両方用意しておくかを検討する。
関連する用語
出典・一次情報
- 文化庁(文化審議会著作権分科会 資料)「生成AIに関する各国の対応について(2024/12時点)」
- European Parliamentary Research Service「AI and copyright: The training of general-purpose AI(2025年4月)」
- European Parliament(JURI委員会委託調査)「Generative AI and Copyright: Training, Creation, Regulation(2025)」
- European Commission (Shaping Europe's digital future)「New feasibility study for introducing an EU-level registry of Text and Data Mining opt-out(2026-07-13)」
- artificialintelligenceact.eu「Article 53: Obligations for Providers of General-Purpose AI Models」
- EUR-Lex「Directive (EU) 2019/790」